報告 佐藤 恵亮





天気は予報の通り夕方から雨がシトシト降りはじめていた。我々5人を乗せたワンボックスカーはそんな雨の中、荒川源流滝川を目指し走っている。 今回は、この時期にしか味わえない山の恵みを少しだけ分けていただき大宴会をしよう!というのが主な目的である。しかし、あいにくの天気。テンションは盛り下がっていた。
一瞬、話が途切れたときメンバーの一人が重い口を開いた。
「この雨じゃ、重い荷物を背負ってのあの歩きは嫌だな。」
全員が心の中に思ってはいるものの声に出して言わなかった一言だった。
「キャンプ場のバンガローで大宴会ってのもアリだなぁ。」
「いいねぇ、でも今年度初の泊まり予定だし、やっぱり沢の近くで焚き火囲んで宴会やりたいよねぇ。」
「雨が降っても帰りの心配のない所で、歩きも大変じゃないところねぇ・・・おっ!赤沢谷にするか?奥のほうまで行けば結構いいテン場もあるし、帰りの心配は全くいらない。」
「いいっすねぇ! そうしましょう。」
「そうだな。」

全員の意見が一致した。そうと決まれば気持ちがグンと軽くなった。何しろ赤沢谷まではきれいな道がついており、予定していた滝川の半分以下の歩きである。
コンビニで買い物を済ませ、入川観光渓流釣り場駐車場に到着。
いつものパターンでこの山行の無事を祈って、車止め宴会を開始する。 買い物袋の中から酒とつまみを出し軽く飲み始める。 買ってきたビールがなくなった『まにちゃん』(馬庭隊員)が座席後ろの荷物をゴソゴソし始める。
「これも飲みましょうよ、日本酒!」
歩きが短くなったことで心の隙間が生まれたのであろう。
「それ、持っていくやつじゃないの?」
「うん!そうだよ。」
人の心配、山の中での酒不足になる心配をよそに勢い良く飲み始める。



雨のため車中にて入山祝い

しばしの仮眠から目覚めると、案の定まにちゃんが「気持ち悪い」と言って車から出て行き、少し離れた所で●●。
さて、二日酔いのまにちゃんも何とか準備が整い、出発。ラッキーなことに夜中降り続いていた雨はやんでいる。
森林軌道跡であるこの道にはいまだその当時のレールがあちらこちらに残っている。 この道を歩くと、初めてここに来たときのことを思い出す。 2002年の4月、古い地図にだまされ急な上り坂を行ったり来たりしたこと。けんちゃん(菊地隊員)が「いま青い屋根が見えた!」と皆を喜ばせたが、柳小屋ははるか先だったこと。もちろん小屋のの屋根は青くなかった。 高巻き中に貝好さんがなくした竿が帰りに木の枝にぶら下がっていたこと。そして、夜の小屋から見えた青く不気味な正体不明の光・・・すべてが楽しい思い出である。
赤沢谷はところどころ崩れており、ちょっとだけ緊張。それでもテン場まではそう時間はかからなかった。


  
森林軌道を行く                       入川本流を見下ろす


赤沢谷出合にて一服

  
秩父名物?マムシグサ(毒)                  秩父名物?ハシリドコロ(猛毒)



本流、支流の2班に別れ釣りに出かける。私の入った沢は最高に渓相はよいが全くイワナの姿を見ることはなく坊主。早々とテン場に戻り薪拾いをはじめる。本流に行ったメンバーは暫くして帰ってきた。型は大きくないが数匹のイワナが釣れたとのことだった。 今回は釣りがメインではないのですべてリリース。

 
テン場設営を終え出発                           かつての伐採小屋か

 
小屋前には数え切れないほどの一升瓶が・・・昔のこととはいえひどい     あ〜そんなご無体な!」  「ええい、よいではないか!」
                                                            

 

 
日帰り圏内のイワナはリリースが基本です                        宴会前のお昼寝タイム


                                                              
さあ!大宴会の始まりだ。 「カンパーイ!」
今回、私が用意したのは山の恵みがあることを想定しての餃子。 しかし、それは叶わずいたって普通の餃子になってしまった。 しかーも!作り始めて気がついたのだが、何やら形が変なのである、皮の。 そう、慌てて買出しをした為サイズと枚数ばかりに目が行き、なんとワンタンの皮を買っていたのだ(泣)。 そんなことにはめげず頑張りましたよ、ヒダヒダ。ちゃんと餃子になりました。 丁寧に焼き、出来上がるとみんなの評価は上々。あっという間に一回目終了。自分の料理が喜んでもらえるって本当に幸せな気持ちになりますよね。
けんちゃんのゴルゴンゾーラ、焚き火でじっくり煮込んだ隊長の自信作、寄居ホルモンで作ったもつ煮込み。どちらも「うっめぇ〜!」
次はまにちゃんの出番。「ピザ持ってきたんだから。」 「おっ、いいねぇ」
みんなフライパンの蓋が開けられるのをじっと見つめた。
まにちゃんは自信満々に一言、「焦げないようにクッキングシートを下に敷いてみたんだ。」
しかし、まにちゃんのその余計なひと工夫は一瞬にして悪夢へと変わった。
「あっ!」 グッと近づいて中をみると、そこには裏面が真っ黒に焦げた悲惨な状態のピザ・・・。
そしてその下には真ん中にぽっかりと穴の開いたクッキングシートが鎮座していた。 手にとって持ち上げるとその大きな穴から悲しみに打ちひしがれるまにちゃんの顔が・・・。
腹がよじれんばかりに笑わせてもらった。
まにちゃんのもう一品、ステーキはとてもうまかった。(工夫ゼロ?)
全てを紹介できないのが残念だが、うまい料理と楽しい会話で満腹。
飲んだあとはカラオケといきたいところだがここは山の中、通信カラオケは無い。アカペラの大合唱が山々に響き渡った。


 
「サトウの餃子」製作中                     お見事!

 
菊地シェフのゴルゴン・パスタ                       オニオンツナサラダ

 
馬庭のピザ  なんで紙敷いてあるの?                 工夫が裏目に・・・ほとんど炭化したピザ


「悲しい〜!」って怖いんですけど、顔が


焚き火を囲んだ2次会。 いつものように眠気との戦いに敗れたけんちゃんに、まにちゃんが声を掛ける「そろそろ寝ようかぁ?」
フラフラのけんちゃんに優しく肩を貸し、寝床へ向おうとしたそのとき「ガラガラ! バッシャ−ン!!」  
足元が崩れ、けんちゃん1人が水中に没し、何やら楽しそうにはしゃいでいるではないか!? 沢の中で石を抱いて横たわるその姿、水しぶきをあげて戯れるその表情、そして岸に上がったときの満足げな様子。 沢で遊ぶことの喜びを全身で表現しているかのようだった。
我々は、外秩父七峰縦走ハイキングに参加することで気がついたのだった。
「俺たちは沢筋じゃないと生きていけない。」 ということを・・・。
シュラフに潜り込みけんちゃんが言った。
「まにちゃんが誘導しなければなぁ・・・ブツブツ。」
まにちゃんへの感謝の言葉は、深く私の心に刻まれた。
「やっぱり沢が大好きだ!」

   
楽しい宴会は進み・・・        いつものようにけんちゃんダ〜ウン!

 
向こう側は沢だよ、危ないよ!

 
ドッボーン!   「冷て〜っ!」                       「さっみーっ!」

  
翌朝 「まにちゃんのせいで・・・ブツブツ」        「んん〜? 何かあったんすか〜?」


お弁当もって帰りましょ♪



帰り道、全くの偶然なのだが、今回都合により参加できなかった荒ちゃん(荒船隊員)が渓流釣り場で家族サービスをしている姿を見かけた。 沢から離れられない男がもう1人いたのだ。