報告 菊地 顕一




今年もシーズン始めの恒例行事「小林師匠と行く1泊2日魚野川(秋山郷)ツアー」の季節がやってきた。
毎年、この時期の釣行は梅雨空にやきもきするのだが、『完全無欠の雨男』の小林師匠と『悪天大魔王』のワタシが同行するとなると、皆はなっから好天をあきらめているらしい。 『晴れの王様』と名高い高橋隊長も、最近は加齢!?とともにパワーが衰えているみたいだし・・・。
木曜日、小林師匠から隊長にメールがあり「魚野川は現在増水、週末も栄村は悪天候」との現地情報。 「このまま雨が降り続いたら渋沢ダム上の最初の渡渉も難しいかもしれない。」ということで、急遽、増水してもエスケープ可能な雑魚川に行き先を変更することになった。



心配だった雨も関越トンネルを過ぎ、空を見上げると星がチラホラでている。石打のセブンイレブンでいつものように入山祝いの酒と朝食を買い込み、メンバーを乗せた佐藤号(雨の日は中で宴会もできて、さらに蚊取り線香も焚けるナイスなワンボックスカー)は一路、秋山郷を目指す。
魚野川入渓時の車止めを過ぎ、切明橋を渡っていよいよ雑魚川沿いの奥志賀に抜ける道に入る。
「橋からこんなに時間かかったっけ?」 「おっ、ここか!」 「いやいや、確か道路案内みたいな看板があったよね?」などと入口が狭くて夜は分かりにくいのだが、雑魚川下降点の車止めに無事到着。 ここは30分も下降すれば外川出合い下へ直行するナイスなルートだ。帰りの登りはちょっとしんどいけど・・・。
早速、入山祝いのビールで乾杯し、2本目を飲みきる頃には瞼がくっついてきて、仮眠を取ることになった。
翌朝、目が覚めると隣には小林師匠の車が・・・。 すでに到着し、寝ぼすけ達を起こさずにじっと待っていてくれたようだ。
「おはようございま〜す!」 それぞれが久しぶりに再会した師匠と挨拶を交わす。 釣り支度を整え「さぁ出発するか!」と思っていた矢先、車止めに後から来た年配の釣り師2人組が無言で目の前を通り過ぎようとしているではないか。
「どちらからですか?」と師匠が声をかけると「○○から・・・。」
さらに「どの辺りに入ります?」と聞くと「本流と支流・・・。」と言ってさっさと行ってしまった。後から来て、声をかけなければ素通りしちゃうような、あのマナーの悪さには頭にくると同時に悲しくなった。 少なくとも私より人生経験をたくさん積んでいるいい大人が・・・情けない・・・ああいう自己チューな人間にはなりたくないな。
不愉快な気持ちを抱えたまま雑魚川を目指して下降する。急な下りもなんのその、皆「憤りパワー」で下りが速い速いこと(笑)。
結局、先ほどの2人組に後ろからプレッシャーをかけてしまう形となった。
約30分の下降で沢床に着く。水の流れとそれに反射した光のきらめきを眺めていると、さっきから胸の奥に潜んでいたモヤモヤが嘘のように消えていくから不思議だ。 やっぱり渓が好きなんだなぁ。


  
ここからイッキに渓に下る                     天気はドピーカンで最高


ここから外川出合いのテン場までは5分もかからない。 チョー近くて日当たりはいいし、サイコーのテン場なのである。外川を10mほど入った右岸にそのテン場はある。
いつもならタープを張ってから釣りにでかけるのだが、「これから釣り人もたくさん入ってくるだろうから、さっさと釣りにでかけよう。」と雑魚川本流組と私と佐藤くんの外川組とに分かれて釣りあがることになった。
天気はドピーカン!!水面に反射する陽の光が眩しい。予報では週末の天気は悪天候と言っていたのに・・・。 晴れの王様、恐るべし!!
ここ外川は数年前まで永年禁漁とされていた。その後禁漁が解け、アプローチも短く人も多く入っているせいか、ポツポツと飽きない程度にイワナが釣れるのだが、ほとんどが8寸以下と型が小さい。8寸以下はすべてリリースし、佐藤くんの釣り上げた尺上と数匹のオカズをキープした頃、取水堰堤に着いた。
時計を見るとまだ11時ちょっと過ぎ。堰堤脇に腰掛けながら遅い朝食とも速い昼食ともいえぬオニギリをパクつく。
イワナも人数分のオカズにはちょっと寂しい数なのでさらに堰堤上を釣り上がるが、さっきよりもさらにイワナの型が小さくなり、ダラダラ釣りでモチベーションが急に下がってきた。
正面に白っぽい壁が見えてきて急に右に曲がっている。曲がりっぱなに見事な10m滝が現れた。 モチベーションも下がりっぱなしなので「滝上だー!!」などと当然思うはずもなく。佐藤くんと二人「もう止めよっか!」「そうだね!」とあっさり納竿することにした。時間はまだ13時前・・・。
帰りは取水堰堤から外川右岸側の東電の巡視路を使い、あっというまにテン場に到着した。こんなに早い時間に切り上げたのだから当然本流組の姿はない。時間はたっぷりすぎるほどある。
佐藤くんと薪を売るほど集め、着替えたあとはテン場裏でたけのこ採りをして時間をつぶす。やがて本流組も帰ってきた。増水の跡も残っていてダメだったらしい。数尾のイワナをキープしてきた。「良かった!人数分のオカズはありそうだ。」
外川組


  
取水堰堤手前 ナメが続く                           佐藤くん尺上ゲッツ

  
取水堰堤でメシをパクつく

  
小さいイワナばかり                                10m大滝
雑魚川本流組


  
この上ない天気で気持ちよく釣りあがる

  


  
師匠の後ろをピッタリマーク                         師匠が大物をかける


  


  
まにちゃんを暖かく見守る師匠                   もう呑んじゃってるしぃ〜


テン場のすぐ裏でぶっとい筍


いつもより早々と宴会の準備をする。それぞれがそれぞれの役割分担で火をおこし、飯を炊き、イワナを捌き、自慢のツマミを用意する。私は釣っているときも楽しいが、これからの時間の方が数十倍楽しい。
信さんの『イワナの柳川』、まにちゃんの『中華風野菜炒め』、師匠の『焼肉』、私の『ペンネ・アラビアータ』と、ひととおりツマミが揃ったところで乾杯!! やっぱこの瞬間が大好きだよ!
ビール・ワイン・焼酎と酒が進むごとに、比例してツマミも無くなってくる。すると師匠が『ツブ貝とイイダゴの刺身』をザックから出し、信さんがハウス本とうふで作った『冷奴の行者にんにくキムチのっけ』を作り、佐藤くんが『ブランド豚のしゃぶしゃぶ』を用意しする。次から次へと「こんなもん山で食ってい〜の?」ってものがどんどん出てくる。本当に幸せな時間。下界にはオシャレなバーや繁盛している飲み屋ががたくさんあるけれど、ここまで開放的で人の心をシアワセにしてくれる空間はないな。私にとって、渓は「この世で一番最高の居酒屋」だよ。


  
そんなに沢山入れてかき混ぜられる?                  師匠も焼肉の準備

  
ツマミ第1弾 中華風野菜炒め                  ボリューム満天の焼肉

  
イワナの柳川                                   いつものペンネ

  
酢メシ作成中 扇ぎまくる!                         ツマミ第2弾  しゃぶしゃぶロース&バラ

  
ツブ貝&イイダコ                         行者にんにくキムチのっけ


呑むほどにロレツがまわらなくなり、眠たくなり、いつものごとく豪快にダ〜ウン! 最近このパターンが多いなぁ。四十路を過ぎたら酒がイッキに弱くなった気がする・・・。「もう歳かなぁ〜。」と妙に弱気になってしまう・・・。


  
楽しい話はつきない・・・そろそろアカペラ大会か!

  
焚火のそばで2次会

翌朝、先に帰る師匠のため、残りのありったけの食材で朝食の準備をする。 師匠がザックを整理していると、師匠からビールを渡されグビグビと呑んでいる輩がいる・・・。まにちゃんだ・・・・。 去年のこの釣行でも同じ光景を見た気がする。 私もたまらなくなり、信さんの残っている焼酎を「やっつけてあげますよ〜!!」などと言いながらチビリチビリ呑りはじめる・・・。「なぁんたって、1時間かからないうちに車止めだもんね!このくらいいいよね〜!」と、一人納得しながら・・・。


  
朝から寿司を握る(島とうがらし漬け握り)              煙がけっみー!

  
朝からガンガン食べますよ〜!

 
いい気分になってきちゃいました〜                 師匠を囲んで記念撮影


マッタリとした時間の中、「前回の入川赤沢谷といい、今回の雑魚川といい、2連続でこんな楽チン釣行で、来週の本番釣行は大丈夫かなぁ〜。」とふと心配になったが、すぐに「まあ、なんとかなるでしょ!」と超ポジティブ思考が抜けない、相変わらずの私であった。
「晴れの王様、来週もいい天気をお願いしますね・・・。」と心の中でお願いしながら・・・。