報告 菊地顕一



源流シーズンも本格的になってきた6月某日、今回は「混成チーム」での釣行である。

メンバーは数々の釣り雑誌に登場し『焚火料理人』でおなじみの城野さん、城野さんと同郷で『ザ・シャレ(決してダジャレではない)名人』の松岡さん、今では伝説となった私の心の中の永遠のバイブル「田宮語録」を綴られていたという宇都宮渓遊会の平江さん、そして渓美隊からは高橋隊長と私の計5名。初対面の方々ばかりである。
渓美隊以外のメンバーとはあまり渓へ行ったことがないので、心地よい緊張感がとても刺激的だ。はたして渓美隊の宴会力は通用するのだろうか(笑)
出発日の夜、渓美隊の本拠地『川越』で城野さんと松岡さんと待ち合わせをする。初対面の松岡さんと挨拶を交わし、続いてほぼ初対面の城野さんとも挨拶を交わす。
城野さんが開口一番「原因不明の高熱が出て昨日まで3日間続いたんだよね〜、連日40度近く・・・」って、大丈夫なんですかーーー!
「うん、釣りだからだいじょうぶ。」と、あっさりお返事。出発日に熱を抑えてしまうなんて、すごい、「釣りキチ症候群」だ。
高速道路をひた走り、サービスエリアで平江さんと合流。宇都宮渓遊会のホームページで一方的に存じ上げていて、口ひげに坊主頭で一見怖そうなカンジ・・・と思いきや、語り口がソフトで優しい印象(失礼しましたー)、無事初対面の挨拶を交わした。
2台の車に分乗し、南会津に向けて出発する。
道の駅で夜が明けるのを待ち、入渓点へ車を走らせる。今回は山越えルートとのことだが、城野さんいわく、通常のルートで行くとなると複数のゲートが開かず、車止めからもかなり歩くので、この時期源流部へはまだ人があまり入っていないだろうとのこと。そんな源流部へ直接行けちゃう今回のルートは構想5年、3年前敗退のリベンジルートらしい。
「山越えで入れば、山菜バンバン岩魚バンバン、まるで天国だよ〜!」との言葉に超テンションが上がる。(このテンションが、ず〜〜〜っと続けば良いのだが・・・このあと・・・)
林道というか作業道みたいな所を2時間近く歩き、いよいよ山越えの小沢に入る。途中、いい感じにウドが生えていて「山菜バンバン」に胸が高鳴る。沢筋に特段悪いところはなかったが案外時間がかかり、最後は若干の藪こぎで稜線へ出た。現在地を地図で確認すると、どうやら下降目的の尾根筋から外れてしまっているみたいだ。再び稜線上を藪こぎして嫌気がさしたころ、「この辺から下りちゃおう!」との声に一同下降を始める。
急斜面を灌木につかまりながら下りていくと、渓筋には崩壊しそうな雪渓が出てきて巻くようにトラバースする。先行しているみんなの写真を撮ろうと思ってカメラケースに手をやると「あれ?カ、カメラがない!?」どうやらトラバースをしている時に灌木にケースを引っ掛けてカメラを落としてしまったみたいだ。通ってきたコースを振り返ると、そこは「少なくとも50年は人が通らないだろうな!」的なところ。泣く泣くカメラをあきらめる他は手段がなかった。あ〜ぁ・・・。


山越えの途中で小休止中の松岡さん(左)と平江さん(右) まだ先は長いっす〜


よっこらしょ!「さぁーて、行きますか!」

その後は沢床に降り、延々と下っていくが、なかなか本流へ合流しない。出発してから8時間が経とうとしている。時間も16時近くだ。早くテン場を決めなくては・・・。ほとほと疲れはて「歩くのもうイヤッ!」と思ってたとき、右岸側に格好の台地を発見。生い茂るシダを刈り払い整地し、やっとのことで重い荷をおろす。
文章に書くとあっという間だが約9時間の行動、実際時間がかかった。早出の山越え感覚で「3時間半くらいかなー♪」なんて思っていた自分がチョー甘かった。
タープを張り、寝床を作って薪を集める。「初日の宴会は岩魚なしか〜。」なんて思っていたら、城野さんがサクッと岩魚数匹を釣り上げてきてくれた。さあ、準備開始だ!
めいめいがツマミを作りはじめながら、いつのまにか宴会がスタートする。松岡さんは「みんなのツマミが出来上がるまでのつなぎで。」と『ソーセージの直火焼き』を焼いてくれた。こだわりは自宅から持参の『My串』とソーセージは「日本ハムのシャウエッセンに限る」だそうだ。なるほど、パリッとした軽快な歯ざわりがウマイ。平江さんも「あまり作らないんだよー。」と言いながら年季の入った渋いフライパンで『ベーコンとピーマンの炒め物』を作ってくれた。やっぱり山では肉系がウマイな!!
どんどんと出てくるツマミの数々に酒のピッチも早まり、初日の疲れのせいか早々と撃沈する私であった。(いつも早いかっ!)


薪?を運ぶ平江さん  どう見ても建築関係のお仕事かと思ったら、某大手通信会社の事務職なのだそうです


こんなの運んじゃうんですもん  どう見ても本職にしか見えないっス


松岡さんこだわりの「シャウエッセン」をmy串に刺して直火焼き


年季の入ったフライパンで炒められた平江さんの「豪快!ベーコンとピーマンの炒め物」


城野さんが作ってくれた「コゴミのナムル」 韓国のりが決め手!


いい感じでマッタリ気分


松岡さん、シブく決めてます  酔いはまわってないのかな?

2日目は昨日たどり着けなかった本流に出て、そこからふた手に別れて釣りをすることになった。
朝食の支度をしていると平江さんが朝からチビリチビリ呑っている。「うおー、なんて最高な人なんだ!ウラヤマシー!」・・・そう、私は前回の雑魚川で、車止めからテン場まで30分ということもあり、残っている酒を朝から喰らい、転んで左手親指を負傷するという失態を犯し、『けんちゃん朝酒禁止令』が出ている身分なのである。しかも平江さんは釣りに出発するときも「あれっ?酒持ってかないの?あっちで呑らないの?」と、これまたサイコーなお言葉。「渓美隊にもこんな人がいれば、肩身の狭い思いをしなくていいのになー。」なんて素直に思う瞬間であった。
朝食を食べ終わり、洗い物をしようと水辺に行くと「あ、あれっ?なんで?人がいる・・・。」
下流から釣り人が二人上がってきた。年配の一人が近づいてきて話を聞いてみると、どうやら地元の人で毎年この時期に来ているらしい。夜中にゲートを開けてそのまま歩き始めてきたそうだ。 我々は山越えで来たと言ったら、逆に驚いていた。
そんな感じで急に人臭くなってしまった某沢であるが、渓の美しさは変わらない。今日も一日、目一杯楽しもうと心に思うのであった。
テン場から本流出合いまではほんの30分の距離であった。合流点のちょと深くなったポイントで松岡さんが早速岩魚をを釣り上げる。続いて城野さん、平江さんにもヒット。今日の釣りはかなり期待が持てる。
本流の水量はこの時間でもかなり多く、午後は雪シロゴンゴンになりそうだ。上流組と下流組に分かれて釣りをすることになり、私と信さんで下流左岸から出合う沢に入ることにする。
2人で入渓した沢は落差のない瀬続きの小さな沢で、森の中をゆったりと流れていた。ポイントからは飽きない程度に岩魚が顔を出してくれて、楽しい釣りができた。炎天の中、小沢の源流部近くまで釣り上がり、真正面に稜線が見えはじめた頃、朝食の残りで作った自家製お弁当を食べ、早めに帰路につくことにした。本流出合いで上流組と合流しテン場へ戻った。
さて、2日目の宴会の準備だ!今日は時間もタップリある。
それぞれがツマミを作りはじめ、明るいうちから宴会がスタートする。山菜を天ぷらや岩魚の刺身などなど、今夜も楽しくなりそうだ。『岩キュウ(岩魚ときゅうりの巻き物)』を食べ終えると、腹も落ち着いてきて「それじゃいっちょう歌いますか!」ってな具合になる。
ちょうど頃合いのよい木の棒をマイクスタンド代わりに、南会津の奥山にブルーハーツの歌が響き渡る。松岡さんはニコニコしながら聞いている。「ならば私も」と平江さんが熱唱、松岡さんも一緒に口ずさんでいる。そして私はというと・・・いつの間にか撃沈。いつものパターンであった。


2日目の朝 広いテン場で朝食準備中


ウドきん(ウドのきんぴら)作成中の松岡さんと傍らですでに一杯呑っている平江さん


「ウドきん」 チョーウマイよ〜!!


はじめて食べた「呉汁」 大豆の甘みが際立つ美味さ


朝食完成  いっただきま〜す!


山菜に目を光らせながら本流に向けて進む


今日も一日天気は良さそう  テンションも上がります♪


やっと本流との合流点に到着! 左奥が我々が来た沢、右側からの流れが本流


さっそく松岡さんが釣り上げる


「釣りキチ症候群!?」 続いて城野さんも


信さんと2人で下流の沢へ入る


ここでも早速ヒット!


オレにも来ました〜  調子いいんでないのー!


朝食の残りで自分好みに作れる「お弁当」  渓美隊では最近ちょっとしたブームに! いいこと教わりました


帰路、テン場まで竿を出しながら進む


ギャラリーが見守る中で竿を振る


さぁ、2日目の宴会準備だ! ウドの天ぷらを揚げる城野さん


薄めの衣で美味そ〜  早くかぶりつきたい♪


宴会 宴会 楽しいぞ〜♪


とっぷりと陽も落ちて小腹がすいた  信さんの「岩キュウ」


渓美隊 佐藤隊員直伝の「ブロックベーコンのかりかり焼き」


この味に、松岡さんから「タマランチ会長!」とお褒めの言葉をいただく


焚火料理には革の手袋が必需品!  これまた勉強させていただきました

 
そろそろ行っちゃいますか ブルーハーツ!  ワン・ツー・スリー・フォーって、もうグテグテやねん!


暖かく見守ってくれる松岡さん

 
「それではワタクシも」と平江さん  次第にエンジンがかかり熱唱


そのとき菊地は・・・すでに落ちていた・・・

3日目、今日は下山の日。下山とは言っても、また山を登らなくてはならない。山越えで帰るというのにマッタリしすぎてしまい、出発が10時近くになってしまった。
約1時間で初日に下降予定だった尾根に取り付く。そのまま忠実に尾根筋を登り、ただっ広い稜線についたのは12時。あとは反対側へ下りて行くだけなのだが、あまりにも広く平らな稜線の中、木々が生い茂り展望がないため目標物が見えず、方向感覚がおかしくなり磁石を頼りに進んでいく。なかなか現在地が特定できないまま、一旦下り始めては上り返し、また斜面をトラバースするといった行動を繰り返す。なんとか下れそうな場所を探し、「ここから下りよう!」と決めたルンゼは途中からかなりの角度で切れ落ち、懸垂にそなえ皆ハーネスを着ける。ルンゼに水が出てきて、やがて小沢が数本合流すると、なんか見覚えのある場所に立っていた。
「あれー?ここって来るときに通ったじゃん!この沢は行きに通ってきた沢だよ!」
結果オーライだがいつの間にかもともと下降予定の沢に下りてきていたようだ。地図もちゃんと読める人が揃っているのに、まるでキツネに化かされたようだ。まぁ、とにかく良かった!
無事林道に下り、車止めに付いたのは18時近く。行きも帰りも山越え時間は8時間オーバー。そりゅ〜疲れますわなぁ!!
でも、いつもと違うメンバーとの沢旅は、勉強になることがたくさんあって本当に楽しかった。


3日目の朝食風景 ついついマッタリしてしまう


テン場をキレイに片付け、昨夜の流行語「すいまっしぇ〜ん」ポーズで記念撮影


おっ、食べごろのウド発見! 山菜を採りながら進む


さて、これから尾根筋の登りだ! 出発!


根っこが松、その上にブナが生えている!?


よっぽどくっつきたかったんでしょうね?


稜線手前で一休み 展望はない


やっと下れそうなところへおりてきた  あとはガンガン行くだけだ


やっぱり旅の締めくくりはビールで!


店の名前は忘れたが、ふらりと寄った田島の中華屋で食べた坦々麺  うまかった!

今回一緒に渓へ行くことができたメンバーの皆さんに感謝!感謝! またぜひ一緒に行きたいですね♪それではアディオース!